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    ~独自条例による景観保存の都市づくり~

     2015年に北陸新幹線が開業し注目を集めている石川県金沢市の都市づくりについて考察します。

    金沢駅東口

     金沢市は北陸地方の中心的都市であり、江戸時代から続く加賀百万石の都市として、歴史・伝統・芸術を大切にする都市であることで知られています。

     都市の特徴として、景観法を根拠とした「金沢市における美しい景観のまちづくりに関する条例」を中心に、金沢市独自の景観条例を13本制定するなどして、独自の行政施策を執っていることが挙げられます。

    ◎条例制定の効果は?

     実際に訪れてみると、金沢駅の東側と西側の2つの地区で街並みに違いが見られます。

    ◎駅東側

     近江町市場、金沢城公園、ひがし茶屋街などがある都心市街地。歩行者にやさしいヒューマンスケールの都市づくりを行っています。独自の景観条例等によって古い建物や自然を守り、街並みの景観保存を行っています。ひがし茶屋街を訪れた際は、職人たちによってしっかりと手入れされた木造建築物が、現在もカフェや工芸品店等に活用され、多くの観光客を集めている様子を確認できました。

    ◎駅西側

     金沢港から駅までの地区を、土地区画整理事業により機能的な都市として整備しています。元々駅東側にあった県庁はこちらに移転しています。金沢港と駅を繋ぐ大きな道路を主軸として碁盤の目状に整備されており、車の交通を主にした(ヒューマンスケールでない)街並みで、駅東側とは対照的な印象を受けます。しかしながら、歩道の一部に自転車交通用の通路が大きく確保されているところに歩行者への配慮が見られました。現地では、自転車通学の学生がこの通路を使用している様子を何度も確認し、国内の多くの都市で見られる「ただ道路の両端に線を引いただけで使用されない自転車交通用通路」ではないことが印象的でした。

    ◎まとめ

     駅東側の保存すべき地区と、駅西側の開発すべき地区。互いに作用し共存する2つの地区からなる都市ですが、都市全体から美意識の高さと誇りを感じると共に、利便性や暮らしやすさに対する考慮も感じられ、「住んでみたい」と思わせる魅力のある都市でした。

     金沢市の様々な取組の考察やこれからの動きについて、今後もまとめていく予定です。

    参考図書: 山出保 『 金沢を歩く 』岩波新書,2014年
          山出保 『 まちづくり都市金沢 』岩波新書,2018年


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